映画に思う ~生業の原点確認

WOWOWで映画を観た。 『遺体 明日への十日間』。

 

葬儀屋の親父は、今年の1月にある女子高からの要請で 『死について』 というタイトルで、葬儀社の仕事を通じて見て思う≪死≫や≪死生観≫などの内容の講演をさせていただいた。

そのときこの映画の紹介をし、「みなさん是非見てください」と言ったのだが、かく言う親父自身がその後観ることがなく今日まできてしまったので大変気になっており、いい機会だった。

ちなみにその講演会は、来月にもお受けしている。

 

東日本大震災の、急ごしらえの遺体安置所。

次々に運び込まれるご遺体。検死に追われる医師、歯科医。搬送やご遺体の管理に奔走する地元の消防団や役所の職員たち。 変わり果てたご遺体と対面するご家族。 悲しみと絶望が充満する安置所で、せめてもと読経をする僧侶。そんな中で、一体一体ご遺体に話しかけてはご家族との橋渡しをするボランティアの、民生委員の男性がいた。

日を追うごとに増えてゆくご遺体。一方、火葬場は復旧のめどが立たず、傷んでいご遺体。地元の葬儀社も奮闘する。 そしてようやく届き始めたドライアイスや棺。

隣接他府県が火葬の受け入れを始めてくれて、少しずつ棺が安置所を出て行く・・・。

 

西田敏行演じるこの男性は、実在の人物がモデルになっている。

ドキュメンタリーに近いもので、ストーリー性はほとんどない。

彼は毎日沢山のご遺体に、優しく優しく話しかける。

「寒いねえ。可愛そうにねえ。今日はあなたのお父さんお母さんが見つけてくれるといいねえ。」

「おじいちゃん、よく頑張ったねえ。ご家族見えたからね。」

 

そしてこの映画に、正確に言うと西田敏行演じるこの相葉という男性に、葬儀社という生業の原点を見た。

葬儀屋の親父は、いつもご遺体には最大限の尊厳をもって接している。  つもりだ。

尊厳・・・。  尊厳てなんだ? 自分が思う尊厳に、優しさってどのくらい含まれてるのだろうか。

急に自信がなくなった。 ご家族には優しく接し、ご遺体には尊厳をもって接するものだと思っていたかもしれない。

相葉さんのご遺体に対する優しさが、この仕事の原点や基本なんだと思った。

 

 

40歳を超えた頃から極端に涙腺が弱くなったのは自覚はしていたが、泣いた。

号泣の部類かもしれない。

 

西田敏行、佐藤浩一、柳場敏郎、沢村一樹、國村準、佐野史郎など、豪華キャスト。

多くの方に観ていただきたい映画だ。